blueberry house

私と彼とブルーベリーハウス

彼に出会ったのは、風の冷たい1月の学校終わりだった。

 

その日、学校が終わってすぐに私は新宿へと向かった。

「すごくいい人がいるんだよね」

よくある言葉を言う友達に紹介され、ほんの出来心で合コンとやらに初参加してみた。

とは言うものの、不安。

初めて会う人と会話なんてできるのだろうか。

というか、ほんの数時間前まで私はこの合コンは明日だと思っていた。

可愛い格好なんてしていないし化粧もテキトー。

こりゃ終わったな、と思いつつもトイレでリップを確認したりしてみる。

どんな人だろうか、内心ワクワクしている自分がいた。

 

新宿に着くと、学校終わりの学生や仕事終わりのサラリーマンでごった返していた。

待ち合わせ場所は、南口。

小田急の改札を出た私は、JRのほうに向かってみる。

「私、大丈夫かな。髪とか変じゃない?」

「大丈夫!全然変じゃないから!」

そう言って彼女は私の背中を少し強めに叩いた。

心臓がドキドキする。

私って人見知りだっけ。

 

南口の券売機の前、柱に寄りかかりほっと一息をつく。

少し怖いような、楽しみなような、ドキドキしながら二人で待っていると、彼女の電話が鳴った。

「もしもし?」

「いま、南口の・・・」

彼女が電話で居場所を伝えている時、見つけた。

同じく南口で電話をしている人。

いや、その隣。

目があった。

向こうもこちらに気づいたのだろう。

彼は微笑んで、電話をしている男の子の肩を叩いた。

 

私はこの時、初めて本物の笑顔を見た気がする。

私と彼とブルーベリーハウス

 

「わあ!ここいいね!」

私はそう言うとなにもない部屋の真ん中でぐるりと回った。

「ほら、ここにテレビ置いて、ベッドはこっちかな?」

新しい部屋というものは、新しい生活を想像させてワクワクしてしまうものだ。

はしゃぐ私を無視して、彼は真剣に間取りを測り始める。

 

「うん。ここにしようかな」

しばらく見た後、彼はそう言い窓を開けて微笑んだ。

決して眺めは良くない。

一階だし。

それでも彼の目は綺麗な景色でも見ているかのように輝いていたような気がする。

ほらね、本当はワクワクしてるんでしょ、私みたいに。と、少しふふっとなる。

ここに決まりだね。

 

「えーっと、なんだっけこの物件の名前。確か、ラベンダーハイツとか、ハウスとか・・・」

 

彼が不動産屋さんでもらった紙を確認して言った。

「ブルーベリーハウスだって」

 

 

 

惜しかった。