彼
彼に出会ったのは、風の冷たい1月の学校終わりだった。
その日、学校が終わってすぐに私は新宿へと向かった。
「すごくいい人がいるんだよね」
よくある言葉を言う友達に紹介され、ほんの出来心で合コンとやらに初参加してみた。
とは言うものの、不安。
初めて会う人と会話なんてできるのだろうか。
というか、ほんの数時間前まで私はこの合コンは明日だと思っていた。
可愛い格好なんてしていないし化粧もテキトー。
こりゃ終わったな、と思いつつもトイレでリップを確認したりしてみる。
どんな人だろうか、内心ワクワクしている自分がいた。
新宿に着くと、学校終わりの学生や仕事終わりのサラリーマンでごった返していた。
待ち合わせ場所は、南口。
小田急の改札を出た私は、JRのほうに向かってみる。
「私、大丈夫かな。髪とか変じゃない?」
「大丈夫!全然変じゃないから!」
そう言って彼女は私の背中を少し強めに叩いた。
心臓がドキドキする。
私って人見知りだっけ。
南口の券売機の前、柱に寄りかかりほっと一息をつく。
少し怖いような、楽しみなような、ドキドキしながら二人で待っていると、彼女の電話が鳴った。
「もしもし?」
「いま、南口の・・・」
彼女が電話で居場所を伝えている時、見つけた。
同じく南口で電話をしている人。
いや、その隣。
目があった。
向こうもこちらに気づいたのだろう。
彼は微笑んで、電話をしている男の子の肩を叩いた。
私はこの時、初めて本物の笑顔を見た気がする。